旅人は言う
その国には大勢の人がいた
しかしその国には
だれもいなかった
 
 
 
ただでさえそこは乾燥地帯。
立っているだけでもその照りつける日光と
乾いた風と頬をびしびしと叩いていく粉塵で体力を消耗するって言うのに
事態が好調の兆しを見せる様子も無く士気は下がるばかり。
胡散臭いこんな国からははやく出て行きたい限りだ。
 
 

「おーいっティア〜グレイ〜!早く早く!」

約一名だけは元気なようだが。
何をそんなにアスカがはしゃいで急いでいるかというと
今日はお城に話を聞いてみようと思ったのだ。
もちろんまっとうな話は期待など到底していない。
ただ自分たちは旅人で暴徒化したモンスターについて研究しているものだ
とでも言って少しでも相手の顔色がかわればそれだけでも十分な収穫だ。
 

「たっくあのガキが。」
「いいじゃない。アスカが元気だとこっちも元気になった気がするし」

ティアの言う事ももっともだ。
このパーティーのムードメーカーであるアスカの顔に笑顔がともれば
それだけですこしは心持が楽になった。

リアラトスの王城は国全体を見下ろすためか高地に位置する。
しかしこの国は入り組んだ特殊な形状をしているために
全体を見るためには相当高い場所で無ければ見えなかった。
そのため城だけが少々国とは離れた場所に建てられていて
まるでぽつんと城が孤独に隔離されているようにも見えた。
 

レンガで造られた質素な階段。
長く続くそれをやっと上り終えたところであった。
 
「なによぉ!いーじゃないのよ謁見くらい!」
 
少女の声。何事かと三人は顔を見合わせ門の前へ。
 

「ええい。帰れ帰れ!何度言ったらわかるこの小娘が!」
「お前のような下賎の輩と高貴なる王族が顔を合わせるわけにはならぬ!」
「だーかーら!今こうやってアポとってんじゃない!硬い事言ってんじゃないわよ!
 王族って言っても流れている血筋以外は全部ただの人間と一緒でしょお?」

なにか揉めごとだろうか。騒いでいるのは一人の少女と二人の門兵。
少女の傍には全身をマントで覆った男が一人いるようだが
そちらのほうは何も言わずにテンガロンハットを深く被り
葉巻をふかせてじっと少女と門兵のやりとりを見ているだけであった。
少女と兵士のやりとりを聞いているだけでは
自分たちも到底謁見など望めそうに無かった。

「なぁなぁどーしたんだ?」

どうする?と言う前にムードメーカーにしてトラブルメーカーのアスカが
またしても話に首をつっこんでいた。
あの馬鹿…と小さくグレイが悪態つくがもう関わってしまったのだから
じたばたしてもどうしようもなかった。

少女は第三者の出現に少々戸惑いの色を見せたが
アスカの身なりをじぃっと見てやがて口を開いた。

「あたしはただの旅人でふらぁっと立ち寄ったこの国にうさん……
 ちょっと興味がわいて。で、ちょっとばかしここの統治者に話を聞きたいなぁ〜と思って
 謁見を頼みにあの長ったらしい階段上ってきたら門前払いってわけ。」

旅人。
たしかにどうみても商人には見えないが
年のころは自分たちと大して代わりの無いように見えた。
しかし一分丈のショートパンツの腰元にはしっかりとしたダガーナイフが携えてあり
くたびれた革の靴からはその長旅が連想された。

「興味がわいたからだと?失礼にも甚だしい!」
「だから言ったでしょ、あたしだって訳ありで旅してんのよ!」

少女と門兵との言い争いが再開した。
このぶんでは永久に話は終わりそうにも無い。

「あの。どうしてこの国では謁見が許されていないんですか?」
ティアがおずおずと門兵に尋ねた。
謁見は何処の国でも大抵は行っている。国があり王がいて国民がいる。
その上下関係は一歩間違えれば王の専制政治になりかねない。
そしてそれは革命などの反王政思想を呼び起こす。
そうならないように王は国のリーダーであり国民の考えを反映するということの一つとして謁見という制度を設けている。
謁見により対等の立場でこそ無いが王族のものと国民が多少なりとも交流する事が出来る。
といっても確かにそこには王族とただの平民という立場の差がある。
平民の中でも国によっては階級差別をして第一階級と貴族級しか謁見を許されなかったり
中には王族本人は一切会わぬがその代わりに大臣が相手をするという
地域もあるようだが謁見を全面的に否定というのはあまり聞かない。

「高貴なる王城に住まうものと汚らしい愚民どもが話すなどという
 謁見制度がある現代社会こそが狂っているのだ。
 愚民は田畑を耕し炭鉱をし国に貢献する忠実な犬であればいいのだ。」

酷い
専制政治どころじゃない
それは完全な独裁者の考え方だ。
国民を人間とみていない。奴隷かなにかと勘違いしている。
自分たちの事しか考えていないようなそんな自己中心的ないいぶりに
そこにいる全員が苛立った。

「そんな……っ。そんなのってあんまりです!!
 民も王も血の通った人間じゃないですか!命の重さもなにもかも変わらない……
 なのに……なのに……!!」

一番に声を荒らげたのは他の誰でもない、ティアであった。
門兵の態度に相当腹が立ったらしく
早口に言い終えるとはっと我に返って萎縮してしまった。
最近増えてきたティアの突発的な行動にきょとんとするグレイとアスカをよそに
黙りこくっていた男がヒューと口笛をふきシニカルな笑みを浮かべた。

「いうねぇ嬢ちゃん。」
「え。あ、あのっその……えと……」

言った本人はすでにすっかりと挙動不振に陥っている。
ティアの行動を好しと受け取ったのは男だけではなかったらしい。
あっはっはと盛大に大声で笑って少女はばしばしとティアの背中をたたいた。

「良くぞ言ったわ!やっぱ旅はこうでなくっちゃねぇ」
「で。どーすんだいお嬢。」
「決まってんでしょ。今日の所は謁見は諦めてあげる。」

今日の所はという事はまったく懲りてはいないらしくまた来る気満々のようだ。
少女はぐいっとティアの腕をひっぱってすたたたたと軽やかに階段を駆け下りた。
それに疑問符を浮かべながらもアスカが。やれやれと嫌々グレイが続いた。
 
 
 
「はぁっ……はぁっ……あ、あのっ!」
しばらくいってもう兵士の姿は見えない。
ただ歩いてきたわけでもなく腕を引っ張られた無理な体勢だったので
ティアの呼吸はだいぶ乱れて早めに息が上がってきていた。
それに気がついた少女はやっとティアを解放した。
 
「えへへごめんごめん。
 アンタたちみたいなまともな奴もいたって知って嬉しくってはしゃいじゃった。
 あ、あたしのことはアンナって呼んで。呼び捨てで構わないわ。」

女は軽くウィンクをした。
やはり旅人には見えない。ただの少女に見える。
「で。あれが…」
挨拶を促された男はくるりと手馴れた様子でテンガロンハットを取った。
初めて晒したその顔は日に照られて浅黒く焼け、古傷がいくつかついていた。
ぎりぎりまで刈り上げたような金の短髪と焼けた肌がよく似合う快活そうな男だ。

「俺ァ、ヴィンセント。ヴィンセント・ギャロだ。」

その声はよく通るような威厳があり微妙ななまりも暖かみにすら感じる。
まだ二十前後であろうという少女と四十はいこうという初老の男。
奇妙な組み合わせである。
 
「俺アスカ!アスカ・ヴェスタ!」
「ティアです。初めましてアンナ、ヴィンセントさん。」
「ヴィンセントさんだぁ?よしてくれや、気色の悪い……
 俺のこたぁギャロでいい。」

影でティアのヴィンセントさんという発言にぷっとアンナが吹き出したのをみて
バツが悪そうにギャロは訂正した。
 
「で?そこの目つきの悪いアンタは?」
「……グレイ・リバースだ。」

グレイの顔を見てティアは思わず顔をひきつらせた。
性格的に考えてグレイが初対面であるアンナとギャロのことを信用するわけが無い。
ただでさえ切れ長の瞳が今日はそれ以上に機嫌が悪そうに見える。

「あの。それで……
 私たちに一体何の用ですか?」

ティアだって相手が何者かわからない以上信用してはいない。

「あたしはちょーっと訳あって人探しの旅をしてんの。
 それでこの国って明らかに怪しいじゃない。
 だからひょっとしたらあたしが探してる人の手がかりでもあるかなぁーと思って。」
「そら、お嬢の旅の理由だろ。
 やっこさん方が聞きたいのは何の用かってことだろう?」
「うっさいわねギャロのくせに!今言おうとしてんでしょ!?
 で。あんた達もその年で旅人だなんて訳ありでしょ?
 ここはお互い協力しませんかーってこと。」

確かにこのままじゃアスカ達だって謁見は許されないだろう。
しかし手を拱いているばかりではならない。

「協力?あんたら何か考えでもあんのかよ」

ぶっきらぼうな声。グレイのものだ。
現在アスカ達三人には何の打開策もなかった。
なにかいいプランがあるというなら飛びつきたい思いだが
実際そんな都合よくいくような状況ではない。

「あたし達のこと信用して無いって感じね。まぁ仕方が無いだろうけど。
 考えってほどでもないけど、正面から入らせてもらえないなら
 バレないように勝手に入っちゃ駄目かなぁ〜って事。ただそれだけよ。」
「ああ?ここの警備を見た限りじゃあそう簡単にいく代物じゃねえだろーが。」

確かにアンナの言うように簡単にいかせてもらえなそうだ。
門の前には兵が目を光らせ、城全体は防砂の高い柵で覆われている。
しかも窓には鉄格子がはめられているのが遠目にも分かる。

「まぁついてきなさい。」
自信ありげにアンナは笑う。
ついて行っていいのだろうか?信用はまだできない。

「どーしたんだよ?いかないのか、ティア?グレイ??」

難しい顔で思案する二人にあっけらかんとアスカが言う。
相手を疑うという事はティアでありグレイでありあまり好きではない。
だがアスカの緊張感の無さには呆れる。

「あのねぇ……」
確かに悪い人には見えないけれど
でも世の中にはそうは見えない悪い奴はごろごろいる。
アンナやギャロもそのうちの一人かもしれない。
ついてきてと言っておいて仲間を大勢呼んであり金を奪う賊かもしれない。
そう言おうとした矢先……

「だって行かなきゃ始まんないだろ?
 考えたって無駄無駄!動かなきゃ状況変わんないんだから
 それなら悪くなろうと突っ立てるより歩いた方がいいだろ?」
にっこりと笑うアスカ。
その裏にはそれ以上の言葉は含まないのかもしれない。
だがその純真な笑みにいつもいいくるめられてしまうのが本当の所だ。

「そーだな。」
「でもグレイっ!」
「変わんねぇんなら歩く。俺はもう動かずに何かを失うのは見たくねぇ。」

絶対ここで反対派の行動をとるグレイが今日は何故かアスカ側だった。
以外でティアは目を丸くさせる。
少しずつだけどみんな変わってきているのかもしれない。

「どーしたのぉ?来ないの??」
「俺ァどっちでもいーさ。来るも来ないも
 お前さんがたの好きにするがいい。」

どうせ他に何も見つからないのだ
少しくらい分が悪くなろうと変わったほうがいい。

アンナが何者だろうと通らずにはいられない道だ。
 
「………いきます。連れて行ってください。」
力強くティアは応えた。
 
 

長い長い階段。しかし降りるとなればあっという間だ。
王城から大分離れ城下が眼下に広がりだした。
注意深くギャロとアンナの動きを見ていたティアが
一つの事に気がついた。

「刺青……?」
「?ああ。アタシのこれのこと?」

そう言ってアンナは髪をはらい首筋をみせた。
そこには青い雫形の刺青が彫られていた。

「綺麗な形ですね。でも私それ、どっかで見たことあるような気が……」
「本当!?」

ただの呟きに対してアンナは過剰なまでの反応をみせた。
自分の声の大きさに思わず本人も驚きの顔を見せる。

「でも、なんか思い出せそうで思い出せないんです。
 ひょっとしたらただの思い違いかも……御免なさい」
「謝る事ないわよ。あ、それと別に丁寧語とか使わなくていいよ。」

空元気でアンナはいうがなにか様子がやはりおかしい。
刺青はなにか相当大事なもののようだ。
ひょっとしたら思い出して欲しくない理由でもあるのかもしれない。

「あれ?そーいやバジルは??」

ふとアスカが思い出したかのように言う。
そいういえば朝から見ていない。昨日まではちゃんと宿にいたのに。

「バジル?それって他のあんた達の仲間??」
「うーん。それはそうだけどマスコットっていうかなんていうか……」
「いや、ただのリスウサギだ。」

的確にいえるいい言葉が無いかと探しているアスカにずばりとグレイが言う。

「リスウサギって何よ。リスなの?ウサギなの??」
「えーっと。どっちも違ぇけどその両方だ。」
「??」

アスカの補足は余計混乱を招いただけに終わった。
そんな他愛も無い会話を交わしているうちに五人は城下町へ。

「そろそろ目的地くらい教えてくれたっていいんじゃねーのか?」

その声はまだ不機嫌そうだ。

「ふっふ〜ん。それは着いてからのお楽しみ!ってねぇ〜♪」

対照的に陽気な声。

「まぁそんなに遠くないんだから焦んない焦んない。」

にっと笑う。
容姿はティアと比べて子供っぽくみえるがやはり二十台なのだろうか?
子供じゃない心の余裕というのが見える。それともただ楽観的なだけか。
だがただのガキならグレイに睨まれてしまえばひるむ。
アンナはむしろ睨みつけるグレイをおちょくっているような風だ。
 
 
そこから数十分。ずいぶん離れた場所まで来た。
国といってもリアラトス国は土地的にはかなり小規模だ。
数十分歩いてすでに町外れと言っていい場所までなった。
 

家もない。ただ荒野が広がる殺風景な景色。

しかしまるでそこにナニかがあるかのようにアンナはふるまう。
タガーナイフを腰からゆっくりと引き抜く。
警戒するグレイとティアだがそんな二人を全く見向きもしない。

ブツブツと呟くその言葉。
それは二度ほど聞いた事があった。

「古の力を借り、今此処に暴け!!!」
!!三人は息を呑んだ。
強い光。全てが同じ。キールのところで起きたのと一緒だ。

光がやんだ頃に現れたのは大きな船が大地の上にあった。
 
「えっへっへ〜驚いたでしょ!」

不適に微笑むアンナ。驚いたというよりもむしろ

「どういうことだよ!!」
「なんで……!?」

困惑するのが妥当だろう。
見ず知らず、恐らくキールとも面識の無いであろう旅人の少女が
キールやカーレントと全く同じであろう術をつかった。

「すっげぇ!アンナも魔硝石が使えんのか!!??」
「ましょ……なにそれ?」

アスカとの会話を聞いた限りじゃやはり面識はなさそうだ。

「魔力蓄積硝石。通称魔硝石。
 とある学者さんが研究なさっていらっしゃる魔法の石のことです。」
「ふぅん。なんだあんたたちも知ってたんだ。」

アンナは別段何も驚きはしない。
余裕のある面構えのままタガーナイフを全員に見えるように目の前にかざす。
ナイフの刀身にはめ込められた小さな宝玉。
アスカのような大きく赤いのでも魔硝石の蒼い僅かな光を発するのでもない。
ライトグリーンの小さな小さな石がはまっていた。

「あたしもよく分かんないんだけどねぇ〜。
 あんた達の言うマショーセキだったっけ?そういう不思議な石はいっぱい存在するのよ。
 まぁ一般人が知っているほどいっぱいってわけじゃあないけど。
 魔法を使える人種は知ってんでしょ?」
「……エルフ。でもあの血筋はもう途絶えかけているはずです。」
「そっそー。それそれ。で、エルフ以外のただの人間は魔法は使えない。
 でもね、そんなただの人間でも魔法が使えるみらくる☆アイテムがあるの。」
「それがそういう不思議な石っつーことか?」
「そーいうこと。大方その学者もちょっと感づいてそんな名前付けたんでしょ。
 まぁモノによっては同じ大きさでも力の大小はあるみたいだけどねー。」

途方もない話だ。
古来より魔術はエルフ族にのみ許された特権呪術とされてきた。
しかしその常識の底辺は覆された。
エルフ族のような膨大な叡智と永き時を生きてきたがゆえの見極める心。
その二つがあるからこそ魔術という特殊なものがあったからまだよかった。
それが人間誰でも魔術をつかえるとなれば話しは別だ。
絶対いずれ悪用しようという者が出てくるに違いない。
 
「お嬢。説明はそんくれぇーにしたらどうでぃ?」

ギャロではない。ギャロよりもなまりのキツい男の声がした。
振り向くとそこには大男が一人甲板の上にいた。

「ハイマー!なによ!あんた仕事はどうしたのよ!!」
「いいじゃねぇかぃ。可愛い嬢ちゃんがやってくるっていうのに
 俺らには仕事たぁちぃとばかり厳しいじゃねぇか。」
「可愛い嬢ちゃんならあたしがいんでしょ!あ・た・し・が!」
「お嬢。そりゃ自意識過剰ってーんじゃねーのか。」
「うっさい!ギャロは黙る!!」
 
様子からしてこの船に乗る者たちはアンナの仲間というようだ。
わいわいと楽しそうな雰囲気。やはりアンナは悪人ではないのだろうか?
 
「ごめんね。騒がして。この船に乗ってんのは皆あんなんばっか。
 あそこに居る馬鹿でかいのがフランケン・ハイマー。このクルーの副キャップよ。」
「お嬢。立ち話もなんだろう。」
「それもそうね。ハイマー!ハッチを開けて!」
「了解。まったくお嬢は人使いが荒くてなぁ……」
「何かいったかなぁ?ハイマーちゃん??」
「いーや。なぁーんも。」
 
しばらくして昇降口が見え、そこに全員が乗り込む。
船の中は意外と雑然としていた。
荷物がまばらに廊下においてありクルーは皆強面の大男ばかり。
その顔の割にはみなハイマーやギャロのように『お嬢』ことアンナに
気さくに話しかけてくる。ここの船員がまるで一つの家族のようだ。

しばらく行った先にでた大きな部屋。
ロビーといった感じではない。大きな机を囲むようにある椅子。
作戦会議室といったところだろうか。
その先にある今までの軽い扉ではなく厳重そうな扉。それをおもむろにアンナは開いた。
そこは操縦室。相当な高レベルの技術の結集であろう。
見た事も無い機械がずらりと並んでいた。

「ここが実質の船長室ね。まぁ実際は指揮の中心となる中枢制御室。ブリッジよ。」
「船長室……って、船長って誰なんだ?」
「あたしよ。」

…………。
アスカの純朴な質問に全員が固まる。

「改めまして、あたしはアンナ。このクルーのキャップ。総指揮官よ。
 ようこそあたしたちの船へ!」
「えぇ〜〜!!??アンナがキャップぅ!?」
「なによぅ。なんか不満でもあんのぉ!?」
「や、不満て言うより不安?」
「なんですってぇ!?アスカ!!もういっぺんいってごらんなさい!!」
「ガァッハッハ!そりゃいいや」
「 ハ  イ  マ  ー  !!」
 
アスカの失言にたいしてアンナを除く船員は大笑い。
本当に家族のように暖かな雰囲気だ。
 
しかしあまりにも失礼な仲間の態度に怒ったアンナは操縦室の扉を閉めて
会議室の中心であろう一番豪華な椅子にどんっと豪快に座った。
 
「でもでもすっげぇーよな!こんなでっかい船の中で
 アンナが一番偉いなんて!格好良いよなぁアンナ!!」
「う?そ、そーおぉ?そらまぁアタシってば何でも出来ちゃう才溢れる美少女で困っちゃうのよねぇ〜。」
 
自慢げにアンナが言う。
社交辞令でないアスカの純粋な褒め言葉がよほど嬉しかったのだろう。
 
「でも、一体どうやって地上を船が動くんだ?」
「ん。あたしらは風賊だから。」
「風賊?」

聞きなれない言葉にきょとんとしてティアのほうをむくが
流石にティアでもわからないらしく小さく顔を横に振った。

「風の力を利用して大地の上を飛ぶのよ。
 風の義賊ハルピュイア。それがあたし達の通り名よ。」

この大型戦艦が飛ぶというのか。少々にわかには信じがたい。

「信じていないみたいね。まぁしゃーないっちゃあしゃーないわよね。
 でも飛ぶのよ。見せてあげたいところだけど……
 今は出力不足でバツ。機体全体を数メートル上げて超低空飛行よ。」

肩をすくめてアンナは言う。
そんなんじゃ風の義賊ハルピュイアの格好がつかなくてねぇと
残念がるがそれでも浮くというのだ。飛ぶといっても間違いではない。
それだけでもアスカにとっては十分すぎた。

「すっげぇ!!すごいよアンナ!
 こんなでっかい船の長でしかもこの船飛ぶのか!?うっわぁ!!本当すっげーなぁ!!」

少々大げさすぎじゃないかと思うくらいのアスカの喜びように
一瞬きょとんとするアンナもにやっと顔に笑みを浮かべた。
そこに人数分の暖かなコーヒーを持ったギャロがやってきた。

「それじゃあ話すわよ。あたしのプランを。」

自信に満ちた顔。
やはりそこらへんはキャップとしての人格を持っているのだろう。
静かにアンナは語りだした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぅん。動き出しちゃったわねぇ。」

くすくすと女は哂う。そこは小高い丘の上。
見下ろす限りは人は点に見えるが女にとってはその程度の距離は障壁にすらならないのだ。

「ま、あの子になんかが出来るとは到底思えないけどねぇ〜」

そう言って外はねした髪を首筋に撫で付けた。
 
 
 
 
 
 
 

風の巫女 水の姫
紅蓮の騎士の子

舞台は整いつつあった
 
 
***後書き***

さあどう転がるかしら!!って所で今回は終了。
ふぃ〜疲れたわぁ……なんか今回一気に書き上げた感がありまする。
まぁ実際めずらしく一ヶ月もかけずに完成っすねぇ。ていうか一週間ちょいくらい?
リアラトス編長くなりそうで嫌だわぁ〜次のところのシーンが好きなのに!!
そして新キャラが続々登場!つってもみんなアンナちゃん側のハルピュイアの人間ばっかだけど。
ハルピュイアは風の妖精さんの名前なのです。別名ハーピー。こっちならみなさん知ってるんじゃないかな?
もうアンナちゃん絡みの会話シーンの楽しいこと楽しいこと。
書いててこんなに苦痛にならない子は初めてです。いいっすねぇー陽気な馬鹿キャラって。(酷)
痴話喧嘩っていうよりも親子喧嘩っすね。
ギャロやハイマーはアンナちゃんのパパみたいな感じですから。
聞いたら本人たち怒りそうだけど。o(>▽<)o ウキャキャウキャキャ
あー……きっとグレイ君とアンナちゃん喧嘩しまくるんだろうなぁ〜
アンナちゃんはアスカと仲良くなりそうな感じっすからw

今回一番苦労したのは船です。
あー……船とか出すんじゃなかったぁ〜用語全然わからない。
乗り降りするところってハッチでよかったけぇ?と思いながら書いてます。
なんか間違いあったら指摘よろしくお願いしますm(_ _)m

次回はなんとあれが……!?

2005.5.29.ミスト
  
 
 

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