「……ちょっと外の空気吸ってきます」

いつもの明るさなんて微塵も感じさせない
掠れるような弱々しい声でティアは言って
どこかへ走り去った。
 
その背中が…泣いているように感じさせた……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「っ………なんで!?………私………」
案の定ティアは泣いていた。
人の気配の無い浜辺で独りぽつんと彼女の風になびいた
美しい銀色の髪が揺れて浮き立っていた。
乾いた砂浜にしゃがみこみその手で、爪で砂に思いっきりつかむが
サラサラと手の横から砂は流れ出る。

泣いている理由は彼女の過去にあった。

リオール村は特異な過去を持つものたちの集まり………
ティアの過去……それは記憶が無かった。
リオール村に来る以前のことを覚えていないのだ。
両親から受けたであろう愛情も何も無い
空っぽの状態でリオール村を故郷として育ったのだ。

自分自身、自分が何者なのかもわからない。

前回だってそうだ。
気づいたら……勝手に口が動いていた。
慣れもしない国王の前で平常心を保てた。
そして今回なんて見たことも無い文字が読めてしまった。
しかもその字は妖精に伝わる文字
こんなのでは自分が人間であるのかすら疑わしくなってしまう。
「なんで…………なんでなの……?」

わからない。
わからないからこそ恐怖心がうまれる。
自分は何者なのか?

後から後から押し寄せる波のように
大粒の涙がティアの白い肌の上を滑った。
 

「らしくねぇぞ」
ビクンッと体が反応する。
低くて………ちょっと怖い印象がするけど
ティアからすればとても落ち着く仲間の声。
「グ……レイ……?」
潤んだティアの瞳にはグレイの姿は映らない。
ただただぼやけた視界の中で人の名前を呼ぶ。
その人物は何も言わずティアの隣に腰掛けた。
ティアからすればそれはグレイだといっているという答え。
ティアは涙を見られたことよりも
どうしてグレイが此処にいるかの方が気になった。
そんな様子を察してか何も言わずともグレイは話し出した。
「……前言ってただろ……海が好きだって……
 お前なら絶対ここに来るだろうと思ってな……」
そう言えば………とティアは思い出した。
ずっと昔”海は見ていると哀しくなるけど好き”といった事があった。
でも言ったのは一度きり。
そんな細やかな事を覚えているのがなんともグレイらしい。
それに漁港や、観光地などの人の多いところは好かないティアの
性格までお見通しときている。

いつものぶっきらぼうなグレイから比べて優しい声。
普通の人から見れば何ら変わりないように聞こえるが
ティアから見れば偶にしか見せないグレイの本当の優しさの現れ。

「私………っ……ひっく…」
泣いちゃいけない。迷惑だ。
頭で解っていながらも留め止め無く涙は溢れた。
ふっと普段は絶対見せないような笑みを浮かべて
グレイはティアの頭をそっと撫でた。
まるでその動作は兄が幼い妹をあやすように。
いつもなら大人っぽいのはティアで
こんなにティアが泣きじゃくるのは初めてのことで。
困惑するような状況なのに
何故か自然と手が伸びた。
泣いて欲しくないと考えるグレイの心とは裏腹に
今くらい思いっきり泣いて欲しいと思う気持ちがまた別にあった。
 
ひきつけが収まりティアも大分落ち着いたところで
グレイは目の前に広がる広大なる海原に視線を移した。

「……俺はいつも……誰からも必要とされていなかった……」
え?
グレイが話しはじめる。
彼は昔から自分の事をあまり多く語ろうとしなかった。
一度瞳を大きく見開かせたが落ち着き払ったグレイの様子を見て
ティアも視線を海へと移す。
「兄貴……。キールは俺よりも全てが優れてた………。」
キールとグレイの間に何かある。
それは気づいてはいたがまさかグレイ自身の口から聞くとは思っても見なかった。
ティアの中に自分が聞いて良いのか?と不安がよぎるが
グレイはお構い無しに言葉を続けた。
「母さんはキールだけを見た。成績優秀、品行方正で………
 ハッ……今考えりゃ当然だな……俺にはそんな言葉似合わねぇ……。
 ……それでも……やっぱ………悔しかった……。」
自嘲気味に言うグレイの声は最後だけ辛そうに聞こえた。
あのいつもアスカを剣で負かして
肉体的にも精神的にも強いグレイには考えられなかった。
「何か1つでも兄貴に勝ちたくて………だから俺はロクに勉強もしないで
 剣技だけを学んでいった………。……母さんに誉められたかった………」
幼い子供が愛情を受けず自分の事を見てもらえない
というのはどれだけの辛さになるだろう?
両親の事を覚えていないティアからすれば想像もつかないが…
……もし父親代わりであるディードに自分のことを見てもらえなかったら………
と考えると胸が締め付けられるような想いだった。

「だが………母さんにとって剣を振り回すなんて野蛮なこと程度にしか見えてなかった………
 どんなに努力して大人を打ち負かす力をつけても……母さんは俺を見ようとしなかった……
 ……むしろ……俺を嫌っていった………」
こんなにグレイは強いのに。
どうして?とその母親が不思議に思える。
努力してもあそこまでの強さを手に入れるのは難しいのに
褒め称える事をしない母親にティアは僅かながら嫌悪すら思えた。

「……家出をする形で俺はリオール村に来た……
 一種の勘当に近いかもな………口には出さなかったけど……母さんは俺が目障りだった……
 出来損ないの俺がいると………兄貴の評判まで下がっちまうからな。」
グレイがリオール村にやってきたのはティアより早い。
ティアが来たのは七歳の頃………その前ということは
そんな幼い年齢でそこまでの苦しみに耐え忍び
多くを考えて自ら家出するという形を取ったのだ………
「グレイは………お母さんが大好きだったんだね。」
やっとティアから発せられた言葉。
波打つ音にかき消されそうな小さな声。
だがグレイにはちゃんと届いていた。
「ケッ……誰があんな最低の女好きになりやがる。
 あの女は男が出来たから兄貴を捨てたんだよ。
 評判の良かった……自分にたてつく事をしなかった兄貴までも捨てたんだ。」
グレイの言葉に父親の名前は出てこなかった。
なんとなく予想はついているのであえてティアは突っ込まなかった。
これ以上傷口に触れてグレイが苦しむのを見たくは無かった。
「俺が傷つくのは構いやしない………ただ………
 苦しむ理由も無く兄貴が辛い思いをするのが許せねぇ………」

そこでやっとティアはグレイの心理に気づく。
グレイは確かに母親に誉められたかった。認めてもらいたかった。
でもそれ以上に兄であるキールを越えたかった。
そして兄に対して尊敬の念を抱いていた。
その兄が貶されるのが何よりも許せなかった………
自分が傷つく事よりも人が傷つく事の方が嫌なんて
なんともグレイらしく思わずティアに自然と笑みが零れた。
 

「………あんだよ………笑えんじゃねぇか」
グレイはいつの間にやら海からティアに再び視線を移していた。
目じりに残った涙の粒を拭いながらティアは言った。
「グレイだって………でしょ?」
「何がだよ」
「だって……キールさんの話のとき………
 まるで自分の自慢話みたいに嬉しそうだったもん」
一瞬表情を渋くさせるがティアに誤魔化しは聞かないと諦めたのか
溜め息を打つと「誰にも言うんじゃねぇぞ」と釘をさした。

「ともかく……だ。俺と違ってお前は俺達から必要とされてる。
 だから………変なこと考えんな。
 何があろうがお前はお前だ。ティア。」
「うん……。グレイも……私からすれば必要とされない人じゃないんだからね。」
これ以上キールさんに心配かけさせちゃ駄目だよ?
と明るく笑ってティアが言った。
いつもの皆に振りまく………
心配性でお節介でお人好しな姉のような笑顔。
グレイには何よりも心に強く残っている優しい笑顔。
「そう……だな………」
力無く言うその顔には優しさが感じられた。
 
 
「あぁ!!!ティア〜!!グレイ〜!!!」
ぶんぶんと両手を力いっぱい振ってアスカが走ってくる。
だがその表情は決して良い物ではなかった。
「モンスターがっ!!!モンスターが出たんだ!!」
一瞬にしてティアとグレイの表情が強張る。
「行くぞ!ティア!!」
「えぇ!」
 
 
走りながらアスカに聞いた話によると
場所は町外れの教会………
グレイ以外の人たちがティアを探していた途中で見つけたらしい。
不幸中の幸いは町外れだったために
巻き込まれる人数が少なかったことだろう。
だが逆に言えば教会にいるのは神官やシスター、老人などの
非力なもの達だけである。
今はキールとカーレントが食い止めているが
彼等二人はどうみたって剣術を扱えそうにない。
三人は足を速めた。
 
 
 

やっと目的地に近づき丘の上に教会らしき建物が見える。
そこにはライオンのような獣がいた。
大きな口から出た牙からは唾液が垂れでて
何かの作用があるのかその唾液に当たった植物は
シュゥゥゥッと音を立てて枯れていった。
「……この町にこんな馬鹿でかいモンスターなんてでねぇぞ」
また前回の事件と何か関係があるようだが
今回はモンスターは正気を保っていた。
興奮しているものの瞳の中に冷静さを伺えた。
前回のは、無理やり最大限に暴走させられたような気配があったが
今回はただの野生のモンスターのように思える。
 
 

「兄貴っ!!」
モンスターが振り上げた手をグレイの剣が受け止める。
横からアスカも援護に回り、ティアは人々の救出を手伝う。

キィィンッ………
アスカとグレイの剣がモンスターに当たる度に
まるで金属同士がぶつかりあるような音が鳴る。
「どういうことだ……?さっきから全くダメージを受けてねぇ!!?」
「ちぃっ………俺らの剣よりもあっちの皮膚の方が硬度が高いって事か………」
どれだけ良いタイミングで急所であろうところへ入れても
モンスターはハエでもいるかのようにあしらい
疲労の様子は全く感じさせなかった。
流石のアスカもグレイも焦りを感じる。
例えこちらがまだダメージを食らっていないとはいえ
反撃のすべが無いなら勝機は無に等しい。

「全てを焼き払うは地獄の業火!!その身に受けよ!!」

カーレントの声が聞こえてバッと全員の視線が注がれる。
そこには魔硝石を高々と掲げたカーレントの姿。

ボォゥッ………

気付くとモンスターの顔周囲が火に包まれている。
これもまた魔硝石が引き起こす不思議な現象………つまり魔法。

モンスターはたじろいでいるもののダメージ力は低そうである。
炎で受けた傷というよりは炎のせいで酸素が消えて息苦しそうにしている程度だ。
決定的な致命傷とは言いがたい。
「くっ……」
カーレントから苦しそうな声が漏れる。
万策尽きたか………?と思われたその時アスカが駆け出す。
「これでっ……どうだ……!!」
アスカはとっさの思いつきで普段使っている剣ではなく
あの日ディードから授かった赤い宝玉のついた剣を振り上げた。

見事剣はモンスターに刺さり返り血を浴びる。

グワァァァァアアア!!!
モンスターはもがき苦しむ。
人々にもう一度緊張感が張り詰める。
ポンッ♪
拍子抜けした空気が抜けるような音が響く。
モンスターがいたところには煙が立ちこめ見えない。

「キュルゥ〜」
煙がやっと消えたときモンスターの姿は跡形も無くなっていた。
代わりにいたのはリスとウサギが混じったような愛くるしい生物。
「え?え?えぇ!!??」
困惑しているのは一番近くにいたアスカ。
それもそうだろう、あのいかにも凶悪そうなモンスターが一瞬にして
こんなマスコットみたいな動物に代わってしまったのだから。

グレイが怪しがって剣先を向けるとキュゥ〜〜っとその動物は怯えだし
どう考えても先ほどと同じ生物とは思えない。
しかし立ち込めた煙はモンスターを辛うじて隠す程度で
逃げ出せば誰かが必ず気付く筈だった。

「!!!……おい、兄貴っ!」
グレイはモンスターがいた場所で何かを拾いキールに投げつけた。
「うわっ。……!!……そういう事か!!」
キールはおぼつかない動作でなんとかそれを受け取り見た。
多少離れていても分かる。
その独特の淡く光る透き通った石は………間違いない。
「魔硝石………?」
魔硝石だということが遠くからでも見て分かるが
それだけでモンスターの謎が解けないアスカが呟く。
キールはアスカの方を向いて説明を始めた。
「魔硝石は謎の石。最初に言っただろう?
 君たちが追っているモンスターの暴走の原因は魔硝石にあるって。
 僕等はあの物語の石は魔硝石が大きくなった物と考えている。
 となると魔硝石はその大きさに比例してなんらかの力を手に入れられる。
 モンスターは本能と五感でそれを感じ取っているんじゃないかな?
 そして………手に入れたモンスター……もしくは誤って手に入れてしまった動物は
 多分魔硝石の魔力を自我で制御しきれず今のように凶悪なモンスターになる。」
魔硝石は細長い三センチほどの大きさ。
その程度でこんな動物があそこまでの力を手に入れるとなると
あの物語の大きさの魔硝石があるとすれば……
まさにその力は悪魔の如く。

「……コイツに危害は無いんだな?」
そう言ってグレイは剣を鞘に収める。
キュゥッとないてその動物はグレイに擦り寄る。
ふんっウゼェとグレイは足で傷つけない程度に蹴り飛ばす。
ころころとボールのように転がってきたその動物に
そっと伸ばしたティアの手は瞬時に逃げられアスカの方へと寄った。
「……どうやら私は嫌われ者みたいね?」

顔を舐められくすぐったそうにしているアスカを見ながら
ほんの少し残念そうに肩を竦めたティアが言う。

「ま、取りあえず一旦ラボに戻ろう。話はそれからでもいいだろう?」
カーレントの提案でラボへと戻った。
 
 
 
 
 
「で、何で連れて来てんだよ」
キュゥ〜?
「連れて来たんじゃなくて勝手に付いて来たんだよ」
キュゥッ♪

そう、そこにはあの動物がいた。
本能を忘れたのかグレイとアスカに懐いてしまっていて
離れる気配が一向に無い。

「よぉし、ここはこの僕が責任を持って………」
「ナンパの道具に使うなよ?」
カーレントの言葉を見事に塞いだグレイに
図星なのかカーレントは何も言い返せなかった。
攻撃性の全く感じられないその動物……
このままでは下手に森に返すに返せない。
それを分かってかアスカが言った。
「なぁ!コイツも俺らの旅に連れてかねぇ?
 旅は情け世は道連れ〜ってな??」
「逆だバーカ。こんなのが居たら邪魔なだけだろーが。」
「私は別にかまわないけど………」
その動物は人語を理解してか
それとも第六感からなのかグレイの方を向いて潤んだ瞳で視線を送った。
うるうるうるうる
「ハッ………」
「なぁ?いーだろグレイ〜」
さらにアスカまでもが駄々をこねだした。
何を言ってもアスカの場合自分の意見を曲げたりしないだろう。
 
うるうるうるうる
「なぁ〜……グレイ〜〜」
 
グレイは如何わしげにアスカとその動物を見比べる。
アスカだけでも純真すぎるその瞳が眼に痛いのに
さらに潤んだ瞳の可愛らしい無害な動物までオプションについてくるのだ。
グレイは溜め息のようにめんどくさそうに言う。
「チィッ……邪魔になったらすぐ見捨てるぞ」
それはグレイのOKの言葉。
ぱぁぁっとアスカに笑顔が灯る。
「っしゃぁ!!よかったなぁ〜お前!」
キュゥ〜♪
アスカは嬉しそうにその動物を抱き上げると
「名前決めなきゃなぁ〜」と言って
うぅ〜んと何度かうなり頭の中でまとまったらしく高々に命名した。
「じゃぁ今日からお前はタマだ!」
キュゥゥゥウウッ!!!
言葉が通じ無くても思いっきり否定しているのが分かる。
「ネッ……ネーミングセンスの欠片も感じさせないね……」
はははっとカーレントが苦笑して言う。
「嫌なのか?ぅ〜ん……ポチ」
それにも嫌がっている様子を見せたのでアスカは淡々と思い浮かんだものを言っていく。
「ミケ」
キュゥ〜〜ッ……
「シロ」
キュゥ〜〜ッ……
「クロ」
キュゥ〜〜ッ……
 
その様子を見ていたグレイがあきれてため息をつく。
「お前馬鹿か?」
むっとアスカなりに一生懸命考えていたので
頬を膨らませてそれじゃぁグレイが考えろよ!と言う。
考えるのが面倒だったのか容姿だけを凝視してグレイが呟く。
「………リスウサギ。」
「まんまじゃんっ!!」
心底不満そうにアスカが言うが
アスカの付けた名前よりはマシな気がする。

「チッ………おい兄貴、そこに在るのは何て名前だ?」
グレイは観念したか舌打ちをすると
植木鉢に植われた観葉植物らしきものを指差す。
「え?あぁ……それはバジルだ。」
「よし、バジル。決定。」
「えぇ!?」
キュゥッ♪
バジルという響きが気に入ったのか
嬉しそうにその動物は鳴く。
最後の決定権はやはり本人にあるといっていいのか
アスカは動物の様子を見て少々不満様子はあるようだが納得したようだ。
 
「じゃぁ君たちの今後の予定についてこっちで考えておいたから話すぞ。」
バジルの名前を考えている間に
キール・ティア・カーレントの三人が話し合っていたようだ。
キールが軽く咳払いをして静まったところで話し出す。
「魔硝石の出所が分からない以上どうしようもないが
 エレルファンのように何かの異常が起きた地域を回っていけば
 確実に情報は得られるはずだ。
 俺達も形は違えど内容は一緒だ。是非協力させてもらうよ。
 それで連絡用にはこれを用いてもらう。」
そう言ってキールは一つのポケットに入るくらいのサイズの
ディスプレイのついた機械をとりだした。

キールの代わりに其処からカーレントが話し出す。
「これは僕たちが研究した魔硝石を利用した機械の一つで
 動画通信機と言ったところかな?君たちに一つずつ渡しておくよ。
 もちろん、これは僕たちも持っている。これで常に連絡を取り合えるよ。」
そう言ってカーレントはその機械を手渡し、
使い方を説明するがてら実演してみせる。
その途端三人が持った機械にカーレントの姿が映る。
「すっげぇ〜!!」
そんな高度な文明とは無縁の所で育ったとはいえ
これほどまでの高精度機械は世界中を探しても無いであろう。
「んで?俺たちはどうすればいーんだ?」
グレイが機械に見とれることもなく
無感動にティアの方を向いた。
それの態度に苦笑しつつティアが言う。
「えっと……ここから北東に位置するリアラトスって所に行こうと思うの。」
「「リアラトス………?」」
アスカとグレイの声が見事にハモる。
だがアスカの場合は聞いたことが無いと言った感じで
グレイの場合は何でそんな所にといった感じだ。

「旅人間の噂によると最近妙に寂れていて数年前と比べて様子がおかしいらしいの。」
「ほぉ……」
「どうせ当ても無いんだしね」
キュゥ〜!
三者三様の答え方だが結論は一つに絞られた。
 

ふっとキールが微笑むと今日は遅いから一泊 泊まらせてもらうことになった。
 
 
ガサガサッ
「ん………」
夜中にティアが物音に気付いて置きだす。
寝ぼけなまこのまま寝室を抜け出すと
小さな明かりを一つだけ灯して読書にふけるキールの姿があった。
「あ?すまないね。起こしちゃったか。」
すまなそうに笑うキールにティアは小さくいえ……と答えた。
「こんな遅くまで熱心ですね……」
「まぁ……ね。学者なんて徹夜はザラだよ。
 だが、君は明日から色々あるんだし、体を休めた方がいいよ」
苦笑しながら本ページをめくり何か書き込みをするキール。
ティアが寝室に戻ろうとしたときキールが小さな声で話しかけた。
「グレイを……支えてやってくれないか……?」
はっとティアが後ろを振り向くが相変わらずキールは
本のページを捲っては書き込む……という作業を続けていた。
「……キールさんがご自分でなさるつもりは無いんですか……?」
「俺じゃ……役不足なんだ……アイツに悲しい思いをさせた一番の原因は俺なんだから……
 ……身勝手な願い事ですまないが俺の代わりになってくれ……」
「……はい。」
ティアは虫が囀るような声で呟くと寝室に戻った。
……パタンッ
静かに扉が閉じたのを音で感じるとキールは天を仰いだ。
「………御免な…こんな兄ちゃんで……
 お前を悲しませないようにって頑張ってたのが全部裏目にでてしまった……
 お前は……今でも俺を恨み続けてるんだろ……グレイ……
 それでも……迷惑がられても……自己満足だろうが…お前のお節介を焼きたいんだ……」
ふっと自嘲気味に微笑むとグレイはまたペンを進めた。
 
 
 
 

早朝、三人は旅立った。
 
目指す場所は一つ。
 
次の目的地は……リアラトス……
 
 
**後書き**

あ〜文才が欲しいです。
本当に今回のは上手に書きたかったんです!!
グレイとキールの兄弟愛。この二人の兄弟愛って難しいですよね。
憎んで、憎まれて、それでもお互いのことを第一に考えている。
互いの幸せを互いに望みあう……言葉で表せばとても綺麗ですね〜。
でもその裏にはそれだけの理由と原因があるんだ!て事を表現したかったのですが
流石に本人たちの会話は無理か〜と思いましてティアちゃんを架け橋に使った果てがこの有様……。
しかも他のイベントいくつかあってその描写を入れている内に文章が長くなって
削っていったら気付くとこうなってた………。
否、バジル命名イベント抜かしてもいいんですけどね?
ただ私自身バジルの名前が思い浮かばなくってこのメンバーでいきなり○○!と
格好良いネーミングは出てこないと思いまして……。
正直言って命名方法グレイと私ほぼ一緒です。ちょうどハーブの本がありまして………。
そういえば主人公アスカ君が目立ってません。
そして目立ってないと言えばカーレントさん話の途中でちょくちょく私に忘れ去られて
台詞が無くなっている!という緊急事態が………。
ごめんよカーレント……シリアス風味にしあげようとしたら
カーレントのティアちゃんナンパイベントが薄くなって存在感すら薄くなってしまった。
さあ!この物語の重要なキー魔硝石ですが……
すっごい使いやすいです!あってよかった!!
本当通信機械が欲しい!と思ったんですがこの世界観の文明にあって欲しくないな〜と
思っちゃいましてぇ……思い付きで魔硝石内臓の機械を作らせて見たら
これネタで色々活用できるじゃん!!と大発見。
そして学者って素晴らしい!!ありがとう!ネタを提供してくれそうな二人の学者よ!!
ただ、それらしいこと小説中に一切してないよ……悲しきかな〜
次回新たな手ごわそうな国が登場です。
さらに主にティアちゃんに困難が待ち受けています。
では!首を長くして遅筆なミストの駄文をお待ちください〜。

2004.9.11.ミスト
   
 
 

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