7 テレパシーは響き続ける
今目の前についているテレビを前にしているあたし
一体この瞬き一回の間に何本の電波が通るんだろう
きっとこの電波が目に見えたらうじゃうじゃとした気持ちの悪い回線が
何本も何十本も何百本も通過してるんだろう
あたしの身体の中に今テレビに映っている
無駄に綺麗揃いのアナウンサーさんの声が通ってる
名前も知らないシンガーの歌声が通ってる
規則的なドラムの音が通ってる
人の頭の中には沢山の電波が通ってる
気持ちが悪い
なのにみんな気がつかない
なんにも気がつかないで平然と生きている
何百本もの回線がうじゃうじゃと通過していっても知らん顔
オカシくない?って思うけどあたしがオカシイの?
ほら今も
ラジオの電波が
誰かがうったメールが
テレビの電波が
携帯電話の音声が
頭の中を掠めていく
気がつかないうちに音の無い音が何べんも何べんも
あたしたちの頭の中で響いては消えて響いては消えて
意味を持った情報も
響いたと思ったら消えてしまってわからない
それでも誰かになにかを届けるために
何十回も何度でも
あたしの身体を無視して電波が通過し続けていく
2005.7.26.ミスト