むかしむかしある所に一人の魔導師様が住んでいました。
その名はフィン・フェアリー。
フィンは一見ただの可愛らしい少女でした。
胸に届くまでの髪を耳の上でヘアピンで留め
身長は155センチと小柄。
ですがフィンはこの世に名を馳せた知る人ぞ知る最も有名な魔導師なのです。

小難しい説明は後にしましょうか。
謎はすべて物語を読めば解明されるのですから。
 
 
 
 
 
 
「フィン様っ!!」
慌しく男が屋敷と呼ぶには少し小さな、家と呼ぶには豪華な
アトリエのような家のドアの前で叫んだ。
取り乱し肩で息をする男は汗だくで
必死に扉を何度もたたいた。
ギィィ……
アンティーク風の扉が木製特有の
木が軋む音を立てて開かれる。
そこからくりっとした大きな瞳でひょっこりと顔をのぞかせたのは
まだまだ幼さが残る少女。
名をフィン・フェアリー。この家の主である。
フィンはかろうじて見覚えのある男のうろたえように
ふむ、と小首をかしげて柔和な笑みでゆっくりと言う。
「いかがなさいました?」
フィンの言葉はあまりにもゆったりとした悠長な口調で
男はどもりながらまくしたてて言うつもりだったであろう
言葉を一度飲み込み、一呼吸おいて語りだした。
「農村に大きな怪物があらわれたのです。
 私たちの力では抑えられるのも時間の問題。
 なにとぞフィン様のお力添えを……」
聞き取れるだけの速度で男は言う。
この男はフィンの住む村で農業をやっている男だ。
フィンはめったに農場などには出向かないのだが
フィンの記憶が正しければこの男の息子が妙に宗教心が強く
熱心に教会に何度も足を運んでいたのでたまに挨拶程度の会話することはあったため
辛うじて見たことがあった。
フィンは右手を顎にあててなにやら妙に様になる格好で考えると
室内をちらりとのぞく。
そこから見える大掛かりな振り子時計がボーンと二回なった。
それを確かめるとクルリと華麗なターンで振り向いたフィンは
何人たりとも寄せ付けない万円の笑みで答えた。
「まだお茶の時間には早いですしね。」
 
 

モンスター。
一体何が始まりだったのであろうか。
かつてこの世に人間という種が栄えていなかった頃
物の怪等存在しなかった。
いつからか彼らは現れた。
否、現れたという表現はふさわしくない。
現れたのではなくモンスターになってしまったのだから。
一部の信心深い者たちからは
モンスターは人間の心を映しているのだという。
人間の邪悪な魂が純粋な動物たちに乗り移ってしまい
人間を襲うようになったというのだ。
もちろんフィンはそんなことを信じてはいない。
そこまで彼女は神を信じていなし、モンスターが何者であろうと気にしないだろう。

農場へたどり着くとそこにはヘドロのような黒い物体が渦巻いていた。
異臭を放つそれには辛うじて口と目のような切れ目が見受けられる。
周りに野次馬や農業を営む者たちがわらわらと円を描くようにして
集まってはいたが何をするでもなくただ回りにいるというだけで
全く持って役に立ちそうな打開策はされていなかった。
あきれるようにため息をうった小さな魔導師は
パンパンッと手をたたいた。
そこにいた者達はフィンの存在に気づきどよめく。
幾度と無くこの村を救ってきたとはいえこんな小さな少女に一体何が出来るというのであろう。
という小さな疑問と英雄がやっと現れたという安堵感。
たしかにいくら何度もこの村を救っていたとはいえ
実際に見たことの無いものにはにわかに信じられない事実だ。
どこにでもいそうな平凡な少女が己の身の丈の二倍、横幅にいたっては五倍もありそうな
凶悪なモンスターを倒すなんて到底不可。
だがフィンはそんなどよめきもなんとも思っていないらしく
澄ました貼り付けたような笑顔を崩さない。
「危険ですので皆さん離れていただけますか?」
口調は遠慮がちに、だがそこに戸惑いや自信の無さは見えない。
ローブから覗く白い手足は一般の少女のよりも細く
大人が本気で力を込めれば軽く折れそうなほどだった。
しかもフィンは丸腰。
そりゃまあ剣士でもアーチャーでもないフィンに
武器などはいらない。魔法さえあればいいのだろう。
しかし一般の魔法使いがもっているワンドや杖も一切ない。
フィンは本当に手ぶらの丸腰なのだ。
当然そんな一人の少女にこの場を任せるべきではないと判断するものもいた。
しかしフィンは全く同じ口調で同じ言葉を繰り返した。
その自信に満ちた笑顔にゆっくりと一人一人回りに集まった大人たちがどいていく。
最後にはとうとうフィンとモンスターしか残らない。
やっと安全と思われる範囲まで村人たちが退いていったのを
フィンは半眼で見届けながら
さして緊張したようでもなく、
逆にフィンからは面倒くささが伺えるような表情を浮かべた。
固唾を呑んで村人たちが見守る中
フィンは何の前触れも無く右手を前に出した。
フィンの手の動きにあわせて転がっていた小石が空に浮かび上がった。
まるで糸でもついているような滑らかな動きで小石は
フィンの手と一緒にふわふわと浮かんでいる。
フィンはその手をクンっと上に向けてモンスターを指差した。
そうすると小石も同時にものすごい速さでモンスターめがけ飛んでいった。
モンスターはヘドロのような体をしていたため
音も無くずぶずぶと小石はモンスターの体にのめりこみ
もう魔力が働いていないのかぽとりと力なく地面に落ちた。
モンスターの方にたいしたダメージはない。
だが不快には感じたようでゆっくりとフィンのほうを向いた。
敵意に満ちた赤く充血した目を向けられてもフィンは態度を変えない。

「あんだクソアマァ!!」
グワァァア!!と盛大な雄たけびをあげるモンスターに
やっとフィンの顔色が変わりだした。
といっても恐怖からのではなくただ単に驚いただけのようではあるが。
「あら、意外ですね。お話できるなんて」
話というのはたいていのモンスターは人語を理解しない。
知能レベルの高い一部のモンスターたちだけが人語を話すことが出来る。
まぁ当然といえば当然であろう。
もとは動物など……今回はヘドロのようだが。
そんなものが人の言葉を話すというのは難しいのであろう。
一般に知能レベルの高いとされているモンスターは
このような人里には決して現れず自分のテリトリー内から出てこない。

「正義ヅラしてんじゃねェ!!小娘がァ!!」
一歩も引く気は無いフィンの様子がモンスターの怒りを煽り
狂ったように叫びながらモンスターは言った。
フィンはこの言葉に正義と一言呟く。
しばし考えた後いやですねぇと笑みを浮かべ
村人には聞こえない、モンスターにしか聞き取れないくらいの声で言う。
「別にこの村なんてどうでも良いんですよ。
 でも感謝されて置けば私の研究費が安く済むので利用させてもらっているまでです。
 というわけでこの村に損害が出ると困るんですよ。
 正義とかではなく村の損害は私の損害に繋がりかねますから。
 てことでとっととテメェはくたばりやがれ」
にこやかに、ゆっくりと。
しかし何の戸惑いも無く台本でもあるかのようにスラスラと述べるフィンに
モンスターは野生の勘ながら恐怖した。
恐怖からか微動も動かなくなったモンスターの様子に
ふぅっと呆れたようにフィンはため息を漏らす。
「会話が出来たところで所詮馬鹿は馬鹿ですか。」
そういうとフィンはにこりと小春日和のような零れんばかりの笑みで
右手を突き出し詠唱を始めた。
「雷獣よ、全てを切り裂く光となれ」
フィンが言の葉を紡ぐとフィンを中心に足元に
何か見知らぬ文字で書かれた魔法陣が青白い光とともに浮かび上がる。
まだ昼間だというのに神秘的な空間がそこに生まれ
青白い光は魔方陣だけではなくフィンの体も包む。
モンスターはやっと我を取り戻し逃げ出そうとした
が、時すでに遅し。
フィンの両手がモンスターに突き出された。
「ライトニング!!」
一瞬の間の後雷雲どころか雲ひとつ無い晴天だというのに
ピカッと一筋の光がモンスターに命中する。
モンスターは多量に水分を含むタール状の体をしている。
一瞬で感電死ししてしまったようだ。

あっという間にフィンの登場から五分もかからず
モンスターを退治してしまったフィンにおぉっと村人から歓声が巻き起こる。
フィンはにっこりと微笑み軽く会釈した後
何も言わず家路に着いた。
 
後日フィンのうわさはあちこちに知れ渡ったが
フィンとモンスターのやり取りを知る者は一人もいませんでした。
それどころかフィンは村人たちに益々英雄視されるようになりました。

昔々
ある所にたいそう可愛らしい魔導師様がいらっしゃいました。
しかし魔導師様はたいそう腹黒でした。

めでたしめでたし?

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