11月13日 冷たい
空気が凍るように冷たい。
酸素を取り入れるために開いた口から冷気が流れ込み
喉の奥が凍ってしまうんじゃないかとどきりとした。
そんなわけ無いのに。
でも一瞬だけ考えてしまうあたり自分は馬鹿なんだろう。
手なんか特に、だ。
男の癖に冷え性だから身体の末端なんて血が行ってないから人よりも冷たい。
男は女に比べて寒さに強い ―― と思う。
春秋ごろに窓を開けたら女子は寒いとすぐに言うから。
軟弱だと思われたくなくて冷え性だなんていったことないけど。
俺も 本当は、あれかなり寒い。
あと、他の男から反感買うのもめんどくさい。
喧嘩とかヤだし。
ぎゅう
急に冷たいはずの手がほんのり暖かくなる。
驚いて横を見れば、見知った愛くるしい笑顔。
「冷たいでしょ?離したほうがいいよ、由愛の手も冷たくなる」
「うん。でもね、手の冷たい人は心が暖かいって言ってたよ」
ぎゅう
「だからハル君は優しいんだね」
由愛の頬っぺたはほんのりと赤い。
たぶん、冷たい風に晒されたせいだろう。
ぎゅう
冷たい手と冷たい手を握れば、暖かい。