11月12日   この気持ち、文にしたためて

「お金持ちって羨ましいなぁ〜」
「うわーっ!?北条ん家マジありえねー大富豪じゃねーか。すっげ!!」
「私達とは格が違うよねぇ…」
 
そんなに何が羨ましいのか
僕にはさっぱり理解できなかった

貧乏に生まれたい、なんて思っていないし、現在の環境に感謝はしている。
生まれたときから大富豪の第一子で、未来を約束されていて、
普通の人たちが滅多に経験できない貴重な体験というのは吐いて棄てるほどにある。
僕は普通の人たちが当たり前に経験できる事ができない。
常に隣には誰かがいて、プライベートもありはしない。
それ以外なら欲しい物は大抵はなんでも手に入った。
英才教育を受けてきたお陰で頭にもそこそこ困っていない。

だけど僕は文月学園を選んだ。
どこかずっとずっと遠いところに入学して親の束縛から逃れるのは簡単。
だけど絶対僕の隣には誰かがいる。それに変わりなかったから。
子供心にわかっていた
反抗心は無意味な抵抗にすぎないということを。
小学校生活は楽しかった。途中までは。
みんな気がついたんだ。
僕がみんなとは違うって言う事に。
それから不自然なまでに、僕は避けられた。
もしも喧嘩になったら大変だ。嫌われないようにしよう。
あいつは生きている世界が自分達とは違うから。

そして中学生になってからだった。
誰もが雪城グループとわかっていて、よそよそしい。
だけど隣の席の女の子だけはふんわりと包み込むような笑顔で言った。
「こんにちは〜、同じクラスになるの初めて…ですよねぇ?」
「キミは?」
「あ、私は志里っていいます〜。あなたのお名前は?」
「……雪城海斗です」
正直変な事を聞く奴だ、と思った。
僕が雪城海斗だっていうことを知らないわけが無いのに。
しかしさすがに雪城グループの名前は知っていたのか彼女はぱちぱちと瞬いてから
またふにゃっと独特の表情を崩した優しい笑みを浮かべた。

「あなたが雪城さんだったんですねぇ。イメージと違ったんで驚きました」
「イメージ?」
「えーっとなんていうか…もっとこう厳かって言うか…うーん…
 …上手く言葉にできませんでした…」

くるくる表情がいれかわって、驚いたり、悩んだり、苦笑したり、見ていて面白かった。
みんな貼り付けたような笑顔を浮かべて紳士淑女面しているのばかり見ていたから、なおさら。

「こんなんで、がっかり…しましたか?」
「え?どうしてですか??」
「もっと厳格で大財閥の子息らしい人を予想していたのでしょう?」
「うーん。それもちょっとありますけれど…。
 みんなの噂よりもずっと、私達と同じで、安心したっていう感じ…でしょうかね」
言葉を失った。
安心?彼女の思考回路がわからない。
「あ…私ひょっとしてすごく失礼なこと言っちゃいました?」
沈黙を怒りととったのか
おどおどと彼女はしどろもどろしだした。
その様子があまりにも滑稽で
「くっ…ふふふ…ははは」
「ふふぇ!?」
「面白い…ですね」
「にゃ…うーん。面白い、ですか?」
笑われているにも関わらず彼女までもが小さく笑った。
不思議で不思議で、理解できないけれど、きっとこのときから好意は生まれたのだろう。
 
 

「………というわけです」
「ふーん。ほぉー。へー?」
「んもうあの時の志里さんったら可愛くて可愛くて可愛くて!!!いえもちろん今もですが!」
バシバシ
「痛ッ…人の背中をむやみに叩くな。あー、馴れ初めなんて聞いた俺が馬鹿だったよ。
 ていうかお前の心理描写回想無意味に長い。いらん」
「このほうが如実に僕の感情がわかるじゃないですか」
「全然理解できない。したくない。……もうお前一人で小説でも書いてろよ」

はっ!?
これはもしや僕すらも気がつかなかった才能だったのですね。

「ありがとう奏真くん!!」
「は?おーい、頭打ったか?」
「何故この僕としたことが今の今まで気がつかなかったんでしょう?
 志里さんにこの思いのたけを僕のこと細やかな心理描写を文にしたため
 わかってもらえば良かったのです!!聡明な志里さんならきっと心打たれることでしょう!」
「え、それはお前の気持ちを理解できない俺は馬鹿だと言いたいわけ?」
ああ外野が五月蝿いですね。
今の僕には志里さんしかみえないというのに!

「ちなみに言うとそんなもの送りつけられたら普通引くから。ドン引きだから」
「貴方のようなちっぽけな人間と僕の麗しき志里さんを同等の器と考えないでください!!」
心が広くて、誰に対しても平等・公平で。
僕の生き方にこんなにも影響を与えたかけがえのない大切な存在。
どうして彼女はこんなにも受け入れてくれるのだろう。
僕の全身のすべてが志里さんのことが愛しくてたまらない。
「……文月さんしか見え無いんじゃなかったのかよ。ばっちり聞こえてるじゃねーかよ。
 というか文月さんの心の広さはお前の常人にはついていけないハイセンスなポエムを
 笑顔で個性的と言い放つあたりで十分わかっている。だけどそれは流石にやめたほうがいい」
「さーって…何から書き始めればいいと思いますか?」
「俺 の 話 は 無 視 で す か !
 ああスンマセン文月さん、俺こいつに変なヒント与えてしまった…」


 

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