「……っ……くっ!!…はぁっ……はぁっ……夢か…」


少年はそこで目覚めた。
時は日が暮れ夕暮れ時。焦点が合わず、ぼやけた瞳は質素な木枠から見える薄暗い窓の外を眺めていた。
ぐっしょりと脂汗で濡れたシャツからして随分うなされていたに違いない。
 
突如村を襲ったあの事件から数年後。
あの幼い少年も確りとした体や筋肉がつき始めていた。とは言えまだ17歳。
あの時の面影は残っている。心の傷は癒えぬまま歳月だけが無情にも過ぎていった。
 
あの事件後彼等は故郷リオール村、そしてその大地を離れ別大陸の王国エレルファンへ来ていた。
ディードの最後の言い付けを守りあの剣を何よりも大切に身に付けていた。
紅く光る剣につけられた宝玉は色あせることなくまるであの日の炎と血のように相変わらず冷酷な光を帯びていた。
 
三人はこの新たな地で剣を作り、剣術・武術を教えて細々と生活していた。
それらは全てディードから教わった事であった。
だが治安がよく平和なこの発展した国だからこそ、それでは稼ぎが足りなかった。
なので彼等は夜は賞金稼ぎをしていた。
何時の時代でも居る自分の種族が全てと信じて疑わない愚かなモンスターのボスを倒す仕事だ。
倒しても倒しても何度でもモンスター達は新たなボスを立てる。血に飢えるモンスター達は戦いを忘れる事はなかった。上のものが消えればそのすぐ下でくすぶっていた者がボスになりそのものの実力が少なければ他の者に殺され最後に残った者がボスとなる。
血で血を洗ってきたモンスターの歴史は永遠に同じサイクルの繰り返しだった。
そして人もまた愚かにモンスターに怯え共存しようという考えは一切もたない。
 
そのお陰で賞金稼ぎと言う事業が成り立つのだが。
愚かで弱い部面が存在するからあるこの仕事は、その真髄を知る者達の心には消えることのないこの仕事に虚しさのような心苦しさがあった。
 
そしてこの仕事は最も人々から嫌われる仕事であった。
殆どの者が賞金稼ぎが居る事で平和が保たれている事を知らずかつて一部の者がその行為に『生命の命を取るのは人もモンスターも同等のもの、賞金稼ぎは人殺し同然』とデモを起こした事も有った。確かにそれは正しい、だが生きるためには当然犠牲が必要なのだ。無知な一般の人々はそれに共感し生命を取って金を稼ぐ賞金稼ぎという仕事に嫌悪感を抱いていた。
見方を変えれば英雄にも悪役にもなる仕事…それが賞金稼ぎだ。
 
正直言ってアスカ、それにティアもグレイもその仕事には乗り気じゃない。
人の愚かで弱い部面が存在するからあるこの仕事はその真髄を知る者達の心には消えることのないこの仕事に虚しさのような心苦しさがあった。


 
「どうした?アスカ」

グレイに話し掛けられてハッと我に返る。
目が覚めてから随分長いことボーっとしていたらしい。

寝起きは悪いが目が覚めてからはこんな事なかったのに。

「……ううん。何でもないよ!」

首を横に振ってこざかしい頭をはっきりとさせる。
あの日の夢を見たなんていっても心配を余計にかけさせるだけだろう。


「そう?なら良いけど、今日は休む?」

ティアが不安そうにこちらを覗き込む。鋭い。
そこまで様子がいつもと違ったのだろうか?2人にこんなことを言わせるなんてらしくない。


「大丈夫だってっ!ホラ!行こうっ!!」

にっこりと心から笑う。正確に言えば『のよう』という言葉が途中に入る。
なんだか胸騒ぎがした。

あの日の夢を見るのは本当に久しぶりだったから。
もう心の何処かで封印したと思っていたから。
 
嫌な緊張感のような物が体の中を駆け巡った。
胸の奥で聞こえる自分の鼓動の音が此れほどにも大きなものと思ったのは初めてだった。
 
なんか……変な感じだ……。
 
普段心配するのはティアの役目でアスカは殆どそんな事はしなかった。
やれるだけの事を一直線に尽くすというのがアスカの長所であり短所である。
そんな自分が心配事なんて本当にらしくない。
 
 
考え事をしていても体は勝手に動く物だ。殆ど無意識のうちにアスカは森まで来ていた。
考え事はしないと思っていたのに心が勝手に深く考え事をしていた。慣れと言うのは本当に恐ろしい。
慣れてしまえばいつものルートなら来れるというのか。
とにかく気持ちを入れ替えなくてはと思い仕事に集中すべくグルリと森の中を見回した。
 
森の中は静まり返っていた。
動物たちの姿形はおろか声すら聞こえなかった。
その代わりと言ってはなんだが、モンスター達がただならぬ殺気を放っているのが手に取るように分かった。
 
グルルルルル………
 
アスカ達の目の前にモンスターが現れる。
モンスターの瞳は据わり紅く充血していた。
息遣いも荒くかなりの興奮状態にあるようでただその瞳には狂気しか写っていない。


「はんっ………行くぞ!!」

ある程度の間合いを取りグレイが剣を握りすぐさま切りかかる。
しかしモンスターはひらりとその攻撃を避けそのままアスカ達が来た方向に走り去った。
どうやらグレイの事は眼中に無かったようだ。


「行っちゃったね」

あまりにもあっけの無かったことや初めてのことで困惑しながらティアが言った。

モンスターならば人の姿を見れば戦うのが当然だろう。
だが今回はグレイの事をまるでハエが飛んできたかのように全く見向きもしなかった。
何度も場数を踏んでいる三人であっても初めての事態だった。

そして何より気にかかるのはモンスターの様子である。

明らかに狂っていた。興奮しているなら興奮しているでグレイに襲い掛かったであろう。
だがモンスターは何かを求めるかのように走り去った。


「一体あの先に何があるんだ??」


アスカは頭を傾げた。どう考えてもあの先にはモンスターが欲しがるような物なんて無かった。
ただの国から続く一本道。そうあの先には国以外には何もない。


「!!!!………まさか!?」

「でもなんで……?!」


三人は一つの事実に同時に気がつき顔を見合わせた。
この先には国以外に何も無い、ならば答えは簡単。モンスターの狙いは国を襲う事。

だが理由が見当たらない。
人間の考えがどうであれモンスターは人と共に共存してきた。
彼等もよほどのことが無い限りわざわざ人の集落にまで侵入しようとはしない。
それは己すらも危険に晒す事であるから。

「理由なんか後だ!!行くぞ!!」


グレイの声に続いて3人は着た道を逆戻りした。今は考えている時ではない。
もしモンスターがさっきのように興奮して国に襲い掛かるような事態になっているのならばあの様子だ。
一体二体で済むような問題では無いであろう。恐らく数百。否、千を越えるモンスターが集まっているであろう。

急がなくては、取り返しのつかないことになる……

三人の脳裏に最も恐ろしい物語が連想された。
あれだけは二度と繰り返してはならない。そう考え続けた最悪の結果を。

三人はただただ必死に走り続けた。
やっと国と森とを繋ぐ門へとたどり着くとついさっきあいさつをしたばかりの門番兵士が倒れていた。

「大丈夫ですか!!??」

大量の出血。右足を噛まれ食いちぎられたらしくドクドクとその足からは赤黒い液体が流れ出る。
肉片があたりに飛び散り見るだけでこちらの顔が青ざめた。

あまりにも痛々しい光景で直視し難い。
だがその出血の割りには傷は浅かった。
食いちぎられたのが心臓から最も遠い右足だったという事が幸いしたのであろう。
ティアはすぐさまその兵士の着ていた腕の部分から布を破り取り止血をした。

応急処置をしたおかげかおぼろげに兵士は意識を取り戻した。


「……城を、王を……お守りしなくては……」

うわ言のように三つの単語を繰り返す兵士。よほど忠誠心の強い若者なのだろう。
辺りにはもうモンスターの影は無いので少々気がかりではあったが3人は兵士をおいてゆく事にした。

この国は軍事兵器の発展した国ではない。
あれだけのモンスターの大群に襲われればいかに城といえどもいとも簡単にやられてしまうであろう。
一刻も早くこのモンスターの暴走を止めなくてはならない。
 
 
3人は城を目指して走り出した。最悪の結果だけは止めるべく。
 
 
 
 
 
 
 


 
一方そのころ城内王の間では。

 

「見張り塔より報告!!モンスターは城内へと侵入!!!」

身軽そうな男の兵士が王に頭を下げて言うとすぐさま持ち場に走り去った。
兵士の言葉で城の中で重役と呼ばれる者たちがどよめく。
モンスターが城内進入を果たすのは長い歴史の中でもそうそう無かったのだ。

王は騒ぐでも命令を出すでもなく静かに目を閉じて玉座に座っていた。
起きているのか寝ているのか。
それすらも分からないように殻の中に閉じこもってひたすら考えをめぐらせていた。

それを見かねて大臣が声を上げる。


「王!!貴方様だけでもお逃げください!!兵士が死力を尽くしているといえど
 このままではそれも時間の問題です!」


王は大臣に話しかけられ始めてゆっくりと目を開いた。
驚くほど穏やかで焦りの無い落ち着いた表情。
真っ直ぐと慌てふためくその大臣を見据えた後、目の前にいた兵士に目線を移した。


「……モンスターはこの城に一直線に向っているのであろう?」

「はっ!城下町の住人には殆ど被害が出ていない模様です。」

「フム。して、国民は避難を始めておるのか?」


立派な顎鬚をそっと撫でつつ王は再び問いた。
その落ち着き払った様子と訳も解らない問いに兵士は困惑した。

「え?誰も逃げる者はいないようですが?」

「……ホゥ。そうか………」


たったそれだけの生返事を返すと王は又視線を大臣に戻した。
口元には薄っすらとした笑みすら浮かべている。
あまりに落ち着きすぎているその様子に黙りこくって大臣は言葉を待った。


「民が誰一人逃げる事が無いというのに何故王が逃げる。
 王は民を統治する物、その王が逃げては民に示しがつかん。
 王は民とともにあるべきなのだ。」

「しっ……しかし!!!」

「しかし・・・・何かね?」

チラリと凝視する王の重みのある静かな圧力にただ言葉を詰まらせる大臣。
このままでは王は確実に死ぬ。そして王はそれを望んでいる。
王が死ねばモンスターは納まる可能性もなくはない。彼らが狙っているのは王の命そのもの。
その他大勢である国民には目もくれずに直進しているというのだから。


なんとしても防がなければならぬ事態だが王の固い決意は変わりそうには無かった。
 

バァァンッ!!!
 
突然王の間の扉が開かれた。そこにはゴリラのような荒れ狂う猛獣が仁王立ちし、王をギロリと睨みつけていた。


ギャァォォオオッ!!!!


大きな雄叫びをあげるとモンスターは荒い鼻息で猛進して来た。

次々と兵士達が飛び掛り、弓の数々を当てようがモンスターの進む速度は変わらなかった。
赤く充血した瞳をギラギラと怪しく光をはなち、実力差は圧倒的であった。
数多の刃にも怯む事の無いその怪物を見てみな諦めかけたその瞬間。

 


ブシュァァアアッ……


目の前に赤が広がる。
一瞬の事で皆何が起きたのかわからなかった。

決して美しいとは言えない赤黒い液体。血吹雪。
その中心にはつい先程まで荒々しくこちらに走ってきたモンスターの残骸。

そして

そのモンスターの上に立つ剣を持った少年。

少年の剣はモンスターに突き刺さっていた。
少年の赤というよりもオレンジがかった朱色の鮮やかな髪とそれと同じ色の大きな瞳は実年齢より幼く見せた。
その場の光景とはあまりにもアンバランス過ぎた為明らかに事態を状況が指し示しているのだが皆困惑していた。

アスカは安堵の溜め息を洩らすと剣を引き抜いた。
ブンッと一振りして剣に付着した赤い液体を振り払い颯爽とモンスターの上から降りる。

そこまでの動作は完璧に行い格好良いものだが突然少年はうずくまる。


「いって〜〜〜〜!何こいつ!!皮膚硬っ!!」

アスカは手首を抑えて屈み込んだ。
そうとう皮膚の硬いモンスターだったらしい。
剣の反動がすべて手首にきてしまったのだ。痛みからアスカの大きな瞳に涙が滲む。

ますますその姿はただの子供にしか映らなかった。


「ハッ、バーカ、勝手に突っ込むからだ」

王達はアスカに釘付けになってい、気配に気づかなかった。
後ろにはもう一人灰色の髪をした目つきの悪い少年と苦笑している青みがかったロングヘアーの少女が立っていた。
新たに現れた少年の態度はどこか偉そうであったが
少女はぺこぺこと何度もおじぎをしていて恐縮そうに身を縮ませていた。


「だってよぉ!あの状況で考える暇なんかねぇもん!!」

ぷくぅ〜と頬を膨らませて拗ねるアスカ。
十分頑張ったつもりなのだがグレイに認められなかったことが不服なのだろう。

アスカは王の身を案じて真っ先に王の間に走ってきた。
逆にグレイは他のモンスターを粗方片付けながらこっちに来たようだ。

大変だったのはグレイたちのほうだった。
直進していたアスカに比べて何十匹もの相手をしなければならなかったのだから。


しばらくポカンとしていた大臣がやっと我を取り戻し上ずった声を張り上げる。


「なっ、なな何者だぁ!!貴様等!!」

少々裏返った不恰好な声だがその不恰好さが幸いしてか
兵士達もその声に反応しようやく本来の仕事を思い出しアスカ達を取り囲んだ。
四面楚歌という言葉が似合う。まさにそう言う状況であった。


「随分と手厚い歓迎じゃねぇーか」

「全然喜ばしくないんだけど……」


そんな状況をものともしないどころか楽しんでいるようなグレイの様子に
ただただティアは空笑いする他無かった。

アスカはというと状況を理解できず頭の中にクエスチョンマークを浮かばせていた。

こんな少年が大人が何人束になっても倒せなかった怪物を倒したとなれば
恐怖感が生まれるのは人間の心理上仕方が無い物なのであろう。

人は普通とは少し違っただけで莫大な不安を心の中に積もらせる。
殺されるなんて事は無いと思うが、ここままでは数日不審人物として捕らえられかねない。

 

「止めい。」


その言葉は三人にとって最も意外なところから発せられた。国王である。
玉座にどんと構えたまま体制を一切崩さずにじっと穏やかな瞳をアスカたちにぶつける。
王の威厳。といったところだろうか。

その一言で場は静まり返った。


「彼の者等は我を救った英雄ぞ、何故捕らえる必要がある?早々に引き下がらんか」

王の一言により兵達は少々戸惑いつつも態度を一変し恭しく一礼をし引き下がった。
その決断に大臣は不満を持っているようであったが王の手前言えずに居た。

全ての兵が消え終わると王は再び口を開いた。


「で、お主等は何者だ?」

もちろん城に入った事が初めてでありましてや王族どころか上流階級と呼ばれる貴族とすら
たいした面識も話した事もないアスカとグレイの2人は慣れない状況で困惑していた。
が、ティアが落ち着き払った態度で王に答えた。


「私共は貴国で鍛冶屋と賞金稼ぎをしている者でございます。
 森に赴く途中モンスターが城を目指し走り去っているのを見つけ、やってきました次第で御座います。」


礼儀をわきまえつつも王にひるむ事も無いその凛とした態度にアスカは驚きの顔を隠せずにいた。
しっかりと背筋をのばし、戸惑いや焦り、緊張の類は見られなかった。


ティアの態度はまるで慣れきっているかのように感じられた。

アスカには難しい言葉だらけでよく解らなかったが国王とティアの会話が繰り返される中で
何とかティアが謝礼金や兵となる事を断ったりするような会話をしているということがわかった。

だがことごとく礼をすると言っているのに断りつづけるティアを王は少々不服なようであった。


「謙虚なのは解るが礼程度は何かせぬとわしの気持ちが治まらん。
 何かして欲しい事等はお主等にはないのか?」


ティアは先までの会話を全て一人でやってきたがこの問いは一人で答えるわけにいかないと
思ったらしくアスカとグレイの方に振り向いた。

グレイは欠伸をし面倒くさそうにチラリとアスカの方に視線を向けた。
大抵こう言う願い事を考えて採用されるのはアスカだ。
グレイは面倒だと言って二人に任せるしティアも私はどうでもいいなんて言い始める。

この国に来た時もそうだった。アスカが自然があって平和な国が良いと言ったからこの国にたどり着いたのだ。

 
「旅がしたい」

アスカはいつになく真剣な瞳で2人を見つめた。
だが”旅”という言葉にグレイとティアは戸惑う。
あの事件の直ぐ後の話し合いで三人はとにかく剣を守る事にした。
本当は始め、ディードを殺した奴を探す旅に出ようと考えたが最後のディードの剣を守れと言う意志を尊重し断念したのだ。


「駄目?グレイ、ティア……俺……」


本当はまだ許せない。
たとえ何年経とうと何十年経とうと。憎い。
なんであんなに優しかった村人が殺されなきゃいけないのか
どうしてディードが襲われなくてはならないのか。

理由も知らずにどうしてたかが一本の剣を護らなくてはならないのか。
どうして自分たちだけがまだ生きているのか。

全てが分からないまま生きるのは辛かった。
三人の中でその話題は暫く出てこなかった。忘れ去ろうとしてい、一種の禁句であった。

しかし今再びアスカの心は揺れ動かされている。
忘れてはいけないのかもしれない。
ぽつりぽつりと切なげに声を出した。


「このまま生きてても意味がねぇ……よな」

「私たちだけ知らないなんて……間違ってるよね」


グレイとティアの反応に一瞬驚き、そしてアスカの顔に笑みがこぼれる。
 
 
「お主等よ、旅に出るなら1つ任務をしてくれぬか?」


国王は旅に出るというアスカ達の会話を聞いたらしく話しに割り込む。


「勿論。兵になれとは言わん。もし引き受けてくれるならば旅の資金援助をしよう」


三人にとって今の障害は資金問題であった。引き受けない手は無いが任務の内容によっては考え物である。
こう言うのはグレイが好きそうな話であって今度はティアではなくグレイが王に問う。


「んで?その任務とやらはなんだ?」

礼儀のれの字も知らぬような物言い。
ティアのとは別種ではあるがその立ち振る舞いはある意味尊敬ものである。
大臣たちがこれまた何か文句の一つでも言いたそうな表情を浮かべるが
王様は茶目っ気たっぷりに微笑みながら言う。


「それが今回のような国を襲う事件が各地では多発しておるのだ。
 その原因の解明をお願いしたい。わしの目にはただモンスターが暴れまわっておるように見えんのだ」

「っつー事はモンスターを動かしてる親玉を殺せってか?」

「さぁ?それは解らん。そのような者が居るのなら……という話じゃ。
 居ないのならばそれでよい。居なかったという報告だけしてもらえればよいのじゃ」


軽くおちゃらけて見せる王にグレイはニヤリと笑った。


「ふぅん。面白そうじゃねぇーか……よし。引き受けたぜその任務とやら」


最後に又ティアが出て行き王に軽く挨拶やなんやらをしてまとめると三人は城を後にした。

家路への帰り道、三人はティアが先ずは港町で情報を集めてから方針を決めると言ってから旅については誰も一言も話さなかった。
思い出したかのようにアスカが口を開いた。


「そういえば、ティア、王様の前で凄かったよな!なんか堂々としてるっつーか……」


アスカの瞳はきらきらと純粋に輝いていた。
友達であるティアがあんなに凄いことをした!という誇らしさでいっぱいなのだろう。

そんなアスカとは対照的にうーんと苦々しく笑いながらティアが立ち止まった。


「それなんだけど、私も解んないのよ。
 なんていうか『先ずはこれを説明しなくちゃ』とか思ったら使った事も無いような言葉とか言い始めて
 口が勝手に動いたのよ。王様の前だって言うのに緊張とか全然しなくって……」

私って変なのかな?と哀しげにティアは微笑んだ。
だがアスカはそんな事を全く気にしていない様子であった。


「でもさっ!いい意味の無意識に〜なら良いんじゃない?」


ただ真っ直ぐな輝く瞳。
にっこりと万円の笑みで笑うアスカの表情を見てやっとティアにいつもの柔らかな微笑みが戻った。
 
 
 
三人の背中はやがて闇夜に消えていった。
 
 
 
そして運命の歯車は回り始めた

知る由も無い過去と現在の記憶が交差して

彼等の想像以上に多くの者が動く出していた
 
 
 
 
旅はまだ始まったばかり

大志を抱いて子供達は歩き出した
 
 
 

 
**後書き**
なんか無駄に長ったらしかったですがやっと此処から旅が始まります!!
彼等はこれから大きな壁に何度か衝突しますがきっとその絆でなんとかしてくれると思います。
と言うよりも私がその壁に激突して撃沈しないように祈っていてください;自信は無いですが後先考えずに取り合えず今は突っ走ります!!

2004.4.29.ミスト

2005.7.25.ミスト 加筆


 

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